オフィス環境と知的生産性
我が国の部門別エネルギー消費の推移を見てみると、
産業部門におけるエネルギー消費は1970年と比べて若干減少しているものの、
業務部門におけるエネルギー消費は2.8倍にもなっている。これは、
情報社会が到来し知的生産が社会の主な価値となったことに伴い、
知的作業を行う場所であるオフィスビルが増加したためである。
一方、東日本大震災以降,我が国の多くの原子力発電所が停止しており、
特に需要の多い夏期の電力供給は逼迫している。
オフィスビルでも冷房の設定温度を28℃にするクールビズだけでなく、
照明の間引き運用も実施され省エネルギーに努めている。
しかし、このような省エネルギー活動はオフィス執務者の快適性や作業効率に大きな影響を与える可能性があり、
省エネルギーのために仕事の効率が悪くなり残業が増えることでかえってエネルギー消費が増大しては本末転倒である。
この研究では、オフィスでの消費エネルギーを削減しつつ、さらに知的生産性を向上させるオフィス環境を目指し、
特にオフィス作業における知的生産性を客観的かつ定量的に計測する方法について考究する。
ICTを活用した環境配慮行動の促進
2011年3月11日に起きた東日本大震災以降、人々のエネルギー需給構造に対する関心が日に日に高まっている。しかし、家庭部門におけるエネルギー需要は昨今増加しているため、エネルギー需給の問題を解決するには、人々の日常生活における環境配慮行動(Pro-Environmental
Behavior;
PEB)を促進し、それを習慣化する必要がある。
この研究テーマでは、人々の環境配慮行動を促し、その日常行動を変容させるための情報通信技術(ICT)の活用法について考究する。具体的には、
・環境配慮行動をテーマにしたオンラインコミュニティの活性化・継続手法
・ゲーミフィケーションによる環境配慮行動の促進
・個人を対象とした二酸化炭素排出許容枠制度の設計検討
などの研究を進めている。
プラント保守・解体作業への拡張現実感の応用
拡張現実感技術(Augmented Reality;
AR)は、ヘッドマウントディスプレイ等を装着しているユーザの視野にコンピュータで生成した情報を重畳表示することにより、あたかも仮想の物体や情報が現実に存在するかのように見せることで現実世界を情報的に拡張する技術である。この研究テーマでは、拡張現実感技術を活用して、運転寿命を過ぎた原子力プラントの解体作業を支援するための基礎技術、およびその応用システムについて研究・開発する。具体的には、
・プラント構内で安定して利用可能な高信頼性トラッキング技術の開発
・プラント構内の3次元データ再構成技術の開発
・解体作業計画時の解体物搬出/物体干渉確認支援システムの開発
などの研究を進めている。