Abstract


天然ガスは「環境に優しいエネルギー」、「化石燃料の中でも最もクリーンなエネルギー」といわれている。天然ガスはメタンを主成分とし、燃焼時に地球温暖化や大気汚染の原因となる物質の発生が少ない。メタンを主成分とする天然ガスは、石油・石炭に比べ、分子中の炭素原子の数が少ないため、燃焼時のCO2排出量が最も少ない化石燃料である。また、天然ガスは気体燃料のため、燃焼時のバーナーの工夫によって窒素成分(NOx)も少ないか排出されない。さらに、亜硫酸ガス(SOx)の発生についても天然ガス生産の際に脱硫装置によって除去されるため、極めてクリーンなエネルギーとなる。このため、地球環境保全を図る上で最も有望な化石燃料としてその開発と導入が進められている。 一方、先の第156通常国会において、改正ガス事業法案が可決成立し、新しいガス事業法が公布された。この改正ガス事業法の内容の中には、①国産天然ガス事業者や電気事業者等で一定以上の導管を保有し、ガス供給を行う者を「ガス導管事業者」とする。②全ての一般ガス事業者およびガス導管事業者に託送供給を義務付ける。③託送供給に関する約款の作成・届出・公表を義務付ける、等の内容が織込まれた。その目的は、天然ガスの利用拡大の基盤となるガス導管の整備とその有効活用を図ることにある。 以上のように、日本のエネルギー政策において環境に優しい天然ガスへのエネルギーシフトが進められる一方、天然ガスの利用拡大となるガス導管の整備とその有効活用を図るべく規制が暖和された。本論は、何故、日本の天然ガスパイプラインの整備は遅れてしまったのか、更に、パイプラインの普及に障害となっているものは何か、このガス事業法改正によって、本当にパイプラインの普及は推進されるのだろうか、また、どのようにしてその障害を克服していかなくてはならないのか、等について述べる。

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