Abstract


CO2の大気中への大量放出が地球温暖化の要因として懸念される中、燃焼排ガス等のCO2固定発生源からCO2を分離回収し、貯留・隔離する技術が開発されており、そのためCO2分離回収コストの低減は重要な課題となっている。そこで本研究ではCO2分離回収・液化システム(CO2を分離回収・液化した後、輸送し、貯留するシステム)について、最もコスト的にもエネルギー的にも負担が大きいCO2分離回収プロセスについて、カルド型ポリイミド膜を用いた新しいシステムを提案し、プロセス最適化や排ガス条件の検討を行うことによって現在実用化されているアミン化学吸収法システムよりもCO2分離回収・液化コスト低減が達成できることを示す。膜分離法は排ガス中のCO2濃度が高い場合にCO2分離回収・液化コストが低くなる可能性があることから、CO2濃度の異なる排ガスの例として石炭火力発電所排ガスおよび鉄鋼プラント排ガスにカルド型ポリイミド膜を用いた膜分離法CO2分離回収・液化システムを適用することを想定し、CO2分離回収・液化エネルギーおよびCO2分離回収・液化コストの評価を行った。本研究では、膜分離工程における物質収支、膜面積を透過速度式に基づいて忠実にシミュレーションすることのできる膜分離プロセス解析プログラムを作成し、それを汎用システムシミュレータに組込むことにより、詳細なCO2分離回収・液化エネルギーおよびCO2分離回収・液化コストの評価を可能にした。作成した膜分離プロセス解析プログラムを用いて膜分離法CO2分離回収・液化システムの最適化を行った結果、CO2濃度27%の鉄鋼プラント排ガスに膜分離法を適用した場合のCO2分離回収・液化コストは4.91円/kg-CO2となり、これは現在実用化されているアミン化学吸収法に比べると0.14円/kg-CO2低い値となったことから、膜分離法はCO2分離回収技術として十分の実用可能性があることが分かった。

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