野田 歩夢
「隠消現実感を用いた透明化体験が自己肯定感に与える影響の実験評価」
ウェルビーイングの実現のための方策として自己肯定感の向上が考えられるが、現実には自己肯定感が低い人が存在する。自己肯定感の向上のため、深層学習により身体を隠消した映像を提示するシステムが開発されたが、システムにより透明になったと錯覚させる体験(以下、透明化体験)と自己肯定感の関連には不明な点が多く残った。
そこで本研究では、過去の研究の問題点を解消した上で、透明化体験が自己肯定感に与える影響を分析し、心理変化のメカニズムをより詳細に明らかにすることを目的とする。この目的を達成するため、まず、先行研究のシステムよりも頑健に身体を隠消するシステムを改めて作成した。次に、体験とは直接関係のない要素の影響を排除した上で心理変化を測定するため、予備実験により実験方法を調整した。そして、体験による心理変化の測定実験を行い、その結果を用いて共分散構造分析を行って心理変化のメカニズムを考察した。
実験の結果、感情状態や理想自己と現実自己の差と自己肯定感の関連など不明な点が残ったものの、体験により透明になった感覚が生じ、被評価意識・対人緊張が弱まって自己受容が促され、自己肯定感が向上することが分かった。
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