浅場 渉
「身近な環境におけるVR災害体験が防災意識に及ぼす影響の評価」

 
 近年、防災意識を高めるための防災教育として、VRを活用した災害体験が注目されている。しかし、これまでは設計者が予め選定して作りこんだ特定の環境のみしか体験できず、その環境は体験者が普段生活している身近な環境とは異なる場合が多かった。そのため、自分の日常生活で実際に災害が起きるかもしれないという当事者意識や恐怖感を感じにくいという問題があった。もし、身近な環境でVR災害を体験できれば防災意識が向上する可能性があるが、その効果は確認されていない。
 そこで、実験参加者にとって身近な環境におけるVR災害体験が防災意識にどのような影響を及ぼすのかを、人を対象とする実験により評価した。また、その影響のメカニズムを調べるため、心理モデルを構築した。本研究では地震と火災を扱った。
 その結果、身近な環境におけるVR災害体験は身近でない環境のものよりも防災意識を高められることが分かった。また、構築した心理モデルの分析結果から、身近な環境で起こる地震をVR体験することは、現実感や恐怖感に直接的な影響を与え、さらに防災意識にも直接的な影響を与えることが分かった。身近な環境で起こる火災をVR体験することは、現実感や恐怖感に直接的な影響を与え、防災意識には恐怖感を経由して間接的な影響を与えていることが分かった。