山本 理恵子
「単純課題解答時の認知行動計測に基づく知的集中シミュレーションに関する研究」

　
　近年、仕事や勉強など知的作業を行う時に集中しやすい環境づくりへの需要が高まっており、知的作業中の集中について認知プロセスを解明する必要がある。本研究では、簡単な認知課題を解いている際の個人の認知プロセスを解明する事を目的として、実験とACT-Rという認知アーキテクチャを用いたシミュレーションを行った。実験は二名の参加者に対して行い、簡単な足し算課題を解答する時の視線の動きと解答キーを押すタイミングという認知行動を計測した。これにより、一問あたりの解答時間だけではなく、より細かな認知プロセスに要する時間を計測し、それらの時間分布を表すヒストグラムを作成することができた。各認知プロセスに必要な時間は一定ではなくばらつきがあるが、これが集中状態のばらつきを表すと考えられる。シミュレーションでは、課題を解き進めるための認知プロセスだけでなく休憩する認知プロセスを組み込み、それらの順番やパラメータの値を調整することで、認知行動の時間分布を再現するモデルを作成した。その結果、二名の参加者ともにパラメータの値は同じであるが、認知プロセスが異なることを明らかにすることができた。