久留島 隆史
「デジタルサイネージでの多言語同時表示レイアウトの視認性と可読性の評価」

 
 近年、国際観光客は増加傾向にあるが、日本では観光地における多言語での情報提示の不足が課題となっている。その対策のひとつに、近年普及が進むデジタルサイネージでの多言語対応が挙げられる。現在、デジタルサイネージにおける多言語対応コンテンツは、言語ごとに画面を切り替える形式であることが多い。この場合、ユーザは自分が読める言語が表示されるまで待つ必要があり不便である。そこで本研究は、1つの画面に複数の言語で同じ情報を提示する「多言語同時表示」に着目した。ただし、多言語同時表示は画面内の文字が多く見づらくなる可能性があるため、コンテンツを見やすくする制作指針の策定を本研究の目的とした。本研究では、視認性(見やすい印象を与えるか)と可読性(本文がすらすら読めるか)の2点に焦点を当て、レイアウトの異なるコンテンツを制作し、被験者実験を通じてコンテンツの見やすさを評価した。視認性の評価実験は、日本語を母語とする人と中国語を母語とする人を対象とした。実験参加者は2つのコンテンツを見比べて、より見やすいほうを二択で回答した。回答結果をもとにThurstoneの一対比較法からコンテンツの見やすさの相対的な優劣を算出し、視認性の高いレイアウトがどのようなものかを評価した。可読性の評価実験は、日本語を母語とする人を対象とした。実験参加者は観光客向けの文章を読み、その文章がどのようなカテゴリに属するかを解答した。解答時間から可読性の高いレイアウトがどのようなものかを評価した。結果として、視認性の向上には余白などを用いて全体のバランスに配慮することが、可読性の向上にはユーザの理解できる言語を見つけやすくするすることが有効であることが示された。

論文はこちら→ Kurushima.pdf