早瀬 賢一
「原発立地地域における原子力世論の形成要因に関する研究」

 本研究では、原発建設問題について国内で初めて条例に基づく住民投票を実施した新潟県巻町を対象として、原子力世論の形成要因についてモデル化を行った。

 本論ではまず、セルオートマトン法を用いてパーソナルコミュニケーションの影響による住民の態度変容をモデル化し、これにマスメディアの影響による態度変容と安定な態度への変容を加えた世論変容モデルを用いて、1994年4月から1997年3月までの巻町住民の原発建設に対する世論変容をシミュレーションした。その結果、反対の態度割合がある閾値を越えて大きくなるときは、マスメディアだけでなくパーソナルコミュニケーションも世論に影響することがわかった。

 次に巻町住民への原発問題に関するアンケート調査結果を主に数量化V類を用い分析した。回答者を1994年から2000年までの間で原発建設に対して常に「賛成」「反対」「中立」の態度をとり続けた者と、態度を「変容」した者の4つのカテゴリーに分類して分析し、それぞれの態度形成における特徴を明らかにした。賛成カテゴリーには原発推進派から影響を受けやすく、男性が多く、巻町での居住期間が長い特徴、反対カテゴリーには新聞・テレビや一般の人から影響を受けやすく、女性が多く、巻町での居住期間の短い特徴、中立カテゴリーには影響をあまり受けない特徴、変容カテゴリーには賛成・反対カテゴリーそれぞれに近い特徴を持つ特徴があることがわかった。
さらに以上のアンケートの分析結果をもとに、今後のシミュレーション方法を改良する方向性を示した。

 

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論文はこちら→ hayase.pdf


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